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よこすかボランティアセンター運営計画(第5章 実施計画を進める上で大切なこと)


1、「協働(きょうどう)」について
(1)協働(きょうどう)の意味
 組織分析にもとづいて、事業を組み立て各事業に優先順位をつけていく中で、共通して大切にしていかなければならないことが見えてきました。
 それは、ボランティアセンターのミッション「根づきと育ちを支える」を実現する中で、いかに市民同士の信頼関係が築けたか、どれだけ市民が育ったか、ボランティアセンター実施事業の過程において協働(きょうどう)という視点を大切にしていくことです。
 ボランティアセンターは「市民同士の信頼関係が築けていく過程」「市民が育っていく過程」が、多様な生活課題の解決や、多様化した市民の活動を支えることにもつながると考えています。
 そして、いろいろな主体や社会資源とつながりをもち、事業を進めていくことが「協働(きょうどう)」へつながるきっかけと考えています。

ボランティアセンターが考える協働とは・・・
 ボランティアセンターが、さまざまな主体や社会資源とつながりをもち、事業を進めていくことがきっかけとなり、ボランティアセンターの事業だけにとどまらず、それぞれの役割の異なる主体同士が活動を活かしながらつながりをもち、地域全体で「根づきと育ちを支えます」につなげていく過程を協働(きょうどう)として表します。

 なお、きょうどうには「共同・協同・協働・共働」などがありますが、この計画では、きょうどうの意味を上記の「ボランティアセンターが考える協働とは・・・」の枠内の内容とし、漢字では「協働」と表させていただきました。

(2)ボランティアセンター職員の協働への取り組み姿勢
   (1)のとおり、ボランティアセンターの事業に取り組むにあたり、いろいろな主体や社会資源とつながりをもち、進めていくために、1つの研修を実施するにも、職員だけで企画するのではなく、企画に市民も加わり、その企画をつくる過程を通じて、市民の気づきや学びにつなげ、その人の育ちを支えていくように取り組んでいくことが必要です。その過程で私たち職員も学び、互いに成長しあうような関係が望ましいと考えます。
   「職員のみで研修会を実施すること」と、「職員が研修会に市民を巻き込みながら企画し進めていくこと」の両者を比較したときに、後者は、職員が市民の意見を1つ1つ丁寧に聞き、受けとめながら企画を進め、さらにそれにともなう事務連絡などを丁寧に行うことを意味しています。これは、職員にとって負担の大きいやり方です。
   しかし、いろいろな人に相談をして、関係する人たちを集めて意見を聞いて、さまざまな人や団体とともに企画をしていく経験がネットワークをつくり、根づきを支え、育っていく力を強めていくことにつながると考えます。  それが、新しい社会をつくっていく1つの原動力になると考えています。
 
2、合意形成の方法
 協働の考え方をもとに、さまざまな主体が地域活動を行う中で、時に主体同士で考え方が対立することがあります。  ボランティアセンター職員は、目標や考え方が違う中でもお互いに分かち合えることもあると考え、主体同士の合意を得る部分をみつけ出し、合意形成への仲介や介入をすることが必要と感じています。

合意形成の方法を以下の4点に整理しました。
@客観的に判断ができる人や客観的な視点が必要
A十分な情報収集と情報提供
B協議(会議運営)の中で合意の形成
C協議(会議運営)の中での役割の認識

@客観的に判断ができる人や客観的な視点が必要
活動をしている人の「思い」は多岐にわたります。その多岐にわたる思いを、一方的な思いだけで判断せずに、その思いを整理分析し、判断基準を明確にし、客観的に判断していく視点です。
A十分な情報収集と情報提供
活動をしている人たち同士が、合意を得るための情報や判断材料を把握しているとは限りません。まずは、客観的に判断をする人が、情報収集や情報提供を行っていく視点です。
B協議(会議運営)の中で合意の形成
一人ひとりに面接のような形で合意をえるのではなく、関係者が集まった会議の議論から合意を得ていくようにします。
関係者が発言をし意見交換の場面をつうじて、意見の1つ1つを積み重ね、どこが共通点で、どこが対立点かを明確にします。明らかになった中で、共通点と対立点を確認し、1つの判断基準をつくり、客観的に判断をしていく視点です。
C協議(会議運営)の中での役割の認識
協議の場において、協議を運営する側が、「協議を仕切る役」「議論をする役」「決断をする役」「客観的に判断をする役」など、誰がどういった役割を担っているのかをあらかじめ認識し、それを協議の場に参加する人たちに伝えておく視点です。
3、会議の運営方法について
(1)協議の場(会議)の意味
 ボランティアセンター職員は、協議の中で合意を形成していくことが、協働へつながる考え方の1つととらえ、この協議の進め方を理解していくことを大切に考えています。
 このため会議の運営について、現状を(2)〜(4)で取り上げ、より良い会議へつなげる方法を考えます。


(2)会議の問題点
 会議の問題点を、「主催者の事前準備の問題」「主催者の当日の会議運営の問題」「参加者自身の会議にのぞむ姿勢の問題」の3つに分けて考えました。

主催者(職員)の事前準備の問題・・・
@例年どおりの同じ会議を開催している
Aテーマに対する適切な時間配分がつくれない
B会議の時間が長く参加者が疲労する
C会議が多く主催者・参加者ともに負担が多い
D参加者が会議の目的を理解せず出席する
E議題に対して適切な出席者になっていない
F人数に対して広すぎる部屋、寒い・暑い部屋など会場が論議できる雰囲気にない
G攻撃的・立場的に偉い人がいるなど意見を言える雰囲気ができない
※これには、会議開催前の準備の段階で主催者(職員など)が工夫する内容です。

主催者(職員)の当日の会議運営の問題・・・
@参加者の意見の引き出し方が分からない
A議論の深まりがない
B発言力の強い人が議論の内容と関係なく判断してしまう
Cずれた論点を修正する方法が分からない
D議題に対する適切な時間配分がとれずに会議が長くなってしまう
E発言しない人から意見を引き出す方法が分からない
F参加者の発言回数や発言時間に差が大きくでてしまう
G攻撃的・立場的に偉い人がいるなど意見を言える雰囲気ができない
H参加者が感情的になって会議の雰囲気が悪くなる
※これは、主催者(職員)の当日の会議運営の仕方になる内容です。

参加者自身の会議にのぞむ姿勢の問題・・・
@参加者が会議の目的を理解せず出席する
A参加者がどういう立場で出席しているか理解していない
B論点とはずれた発言をする参加者がいる
C参加者が意思表示や発言をしない
D会議の発言に責任をもたない参加者がいる
E特定の参加者しか発言しない
F参加者の意見が無責任に次々変わる
G参加者が自由な意見を言えない雰囲気がある
H議題とは関係のない参加者の性格に対して意見する
I参加者が感情的になって会議の雰囲気が悪くなり、会議終了後にしこりが残る
J参加者の発言回数や発言時間に差が大きくでてしまう

 これら3つの問題から、主催者(職員)が、意識することや、工夫することでさまざまな問題を良い方向に向けられる内容を以下にあげてみました。

主催者(職員)が会議を行う上での工夫や配慮など・・
@会議の目的の理解について
(対応方法)
・目的を理解する人を選ぶこと
・参加者へ事前に説明すること
A論点とはずれた発言について
(対応方法)
・会議の論点を事前に整理し、論点に応じて発言を促す
・本来であれば議論できる人を会議に出席してもらうことが理想
・ガス抜き・過ぎるのを待つ
・ずれた意見を解説しながらもどす(意見を静止する理由を伝える)
B発言のない会議について
(対応方法)
・内容を理解してもらうため、必要な情報を伝える
・今の意見はいかがですか?と言った聞き方で聞くのではなく、いくつかの選択肢をつくり発言を促す
C特定の参加者のみの発言について
(対応方法)
・発言をワーカーが整理して確認し、他の人への意見を促すようにする
「あなたはこういうことを言いたいのですね」など整理する
D自由な意見を言えない会議について
(対応方法)
・「相手の意見を尊重する」「発言は○分以内」「1人1回発言する」などのルールを事前につくる


(3)会議の問題点から見えてきたこと
(2)の問題点から、より良い会議の視点として以下の4つを導き出しました。
より良い会議につなげるために見えてきたこと・・・
@会議を行う前に会議に参加することのメリットを明確にすること。逆にメリットの持てない会議には出席の意欲は出ず、出席しても真剣な参加にはつながらないこと
A来て良かったと思う会議は、参加者が意見や発言が言えた時。満足感を高めるためには、また次に意見を言おうと思う雰囲気や、自分の持っている情報を伝えられる雰囲気があること。
Bイベントやシンポジウムなどを開催するといった到達点がある会議は、会議運営をしやすいが、ネットワークをつくるための会議や情報交換をするための会議は、何を到達点にするのかがあいまいなことがあるために会議に参加することで何がうまれるのかの目標をつくること。
C会議は、会議だけを行っている時間が会議ではなく、事前の準備から事後のフォローまでを含めて、会議ととらえていく視点が必要であること。


(4)会議運営においての主催者(職員)の役割
 会議の問題点からより良い会議につなげるために、主催者(職員)が会議を進めていく上で、必要なことを以下の4点にまとめました。
会議運営においての主催者が進めていく上で大切なこと・・・
@参加者が来てよかったと思う「満足感」を参加者に得てもらうこと
A会議に参加することでのメリットを明確にすること
B会議で何を行いたいのか目標を明確にすること

C@ABを実施するために会議の時間だけでなく事前・事後の時間も大切にすること

@ABCを具体的にすると以下のような点がポイントとなります
  • 参加者への学びへつなげるための意味づけを行うこと
  • 会議に参加して、参加者自身が「自分が成長した」という実感をもてること
  • 参加者のモチベーションを高めること
  • 様々な人を結びつけ、ネットワークを広げること
    ※会議終了後名刺交換や懇親の場をもつなど
  • 新しい情報や意見を参加者から引き出したり主催者が伝えること
  • 主催者と参加者同士の信頼関係を深めること
  • 思考・知識・視野の幅が広げるために意見を引き出すこと
  • 今日の意見にはこんなことがありましたと整理し、会議で行われたことをまとめ伝えること
  • 報告だけの形式的な会議やセレモニー的な会議は、参加者の満足感につながらないことが多いために、極力避けるようにすること


    (5)会議運営での留意点
     会議の主催者が、より良い会議を進めることで、合意形成や協働へつながっていくと考えます。そのために、まず会議をどう進めていくかを考えたいと思います。
     会議運営で大切なことは、第5章の「2、合意形成の方法」に記載しました「協議(会議運営)の中での役割の認識」があげられます。
     具体的には、会議を進めていく上で「司会者の役割」と「ワーカーの役割」を区別することです。

    司会者の役割:
  • 司会者は議事進行して、最後に結論を出すための仕切る役割。
    ワーカーの役割:
  • 資料作成や説明をするなどして情報を提供すること。
  • 議論の内容や問題を整理すること。

  • 「会議の中での司会者とワーカーの役割」については、以下の4点に整理されます。
    @ワーカーは、議論が混乱していたら内容を整理することや、みんなが議論につまっていたら必要な情報を伝えること
    Aワーカーは、議事の内容に価値判断を入れないような立場をとること
    Bワーカーは、人数の少ない会議などでは、司会者とかねる時があります。そのときには両方の立場があることを理解すること
    Cワーカーは、情報提供や問題整理をする時に、たとえば、親しみのある人や信頼感のある人から情報提供のための発言を促すことで、他の参加者の理解につながりやすいこともあり、誰にどのように発言を投げかけるかも1つの方法


    (6)具体的な事例を通じて見えてくること
     職員が、仕事で対応した事例をあげ、その事例にどのように対応したか、その内容を検討します。

    事例1)
     ある講演会で当事者の講演を聞いて、その当事者を目の前にして、参加者から「あの人のようになりたくない」という素直な感想がでました。職員としてどう対応しますか?

    対応した例)
    この講演会の場で大切なことは、いろいろな意見を出し合うことです。少数の人たちの声は、多くの人たちに理解されていないことが多くあります。少数の人たちの声を伝えて行くことが大事であり、そのためにこの場があるのです。このような意見がでてきたことも正直なことで、そこからさまざまな人の理解が始まるのではないでしょうか。
    対応した時のポイント)
    「あの人のようになりたくない」といった言葉に言及するのではなく、みんなの意見から学びあうことを大切にしていくことにポイントを置いています。

    事例2)
    ある会議の場面で、「この事業はボランティアセンターでやるべきだ!」といわれました。ボランティアセンターとしてこれ以上の事業は難しいと考えています。そのときに職員としてどのように伝えますか?

    対応した例)
    地域を良くしたい気持ちは同じです。ボランティアセンターで新たに事業を取り組むことはすぐには難しいと思いますが、今、取り組んでいるこの事業のこの部分を工夫することで、少しでも言われている内容に近づけけたいと思います。
    対応した時のポイント)
    「地域を良くしたい気持ちは同じです」というように、共通点がどこかを確認して、そこからはじめて行くという姿勢を大切なポイントとしています。

    上記の2つの事例から大きく以下の@Aの点が見えてきました。

    @共通点を見つけること
    ・社協の職員は司会をしながらワーカーの役割をしながら進めていくことが多く、司会 の立場とワーカーの立場と重なることがあるが、「AさんBさんの言っていることの共 通点を探すこと」。AさんとBさんの対立構造をつくるのではなく、共通点を見つけて、 「違いはあるが○○という共通点があるので、まずはこの共通点を基盤して進めていき ませんか」とすることで、ここは一緒だけれどもここは違う。この違うところをどう すり寄せるのかを大切にしたいということを説明することで、議論が紛糾したり対立 したりすることが少なくなるケースが多くなると考えます。

    A対立する関係で終わらせないこと
  • 社協は協議体のため、協議をして何かを決めたり、合意をつくるプロセスの中に合意 形成に導くような意見の調整の仕方が大切だと思います。
  • 「論議のズレ」だけに注目しがちですが、なぜ「論議にズレが出るか」については、あ まり注目されていないことがあります。論議がズレているという事実だけを追うので はなく、その背景に注目すること。立場が違うことでのズレ、情報量が違うことでの ズレ、行政と社協とで目指すべき方向が違うことでのズレ、価値観が違うことでのズ レ、行政の論理と社協の論理が違うことでのズレなど、対立することが様々な要因で 変わってきます。この理解をすることがまずは大切ではないか。何となく分かってい るけれども整理していないので、それを整理して行くことで少し納得できることもあ るのではないでしょうか。
  • 中には、対立を解消できないこともあり、すべての対立を解消しようとしても、たと えば立場が違うことでの対立点は解消できないこともあるので、解消すべき対立点を 明らかにすることが大切ではないでしょうか。


    (7)職員が会議に取り組む上での姿勢
     会議運営について、今まで記載しました内容をもとに、ボランティアセンター職員が取り組む点として、会議の進め方をあらかじめ、「会議事前検討シートT」「会議事前検討シートU」に記載して、進めていくこととしました。

    「会議事前検討シート」の説明は、こちらを参考にしてください【doc形式】

     シートTには、会議の概要を@記入者名、A会議名、B会議の目的、C会議の日時、D議題、E会議のタイプ、F主な出席者、G出席者、H論点の9つに分類しています。
     シートUには、進行を参加、対立、意味づけ、合意と4つに分類しています。
     このシートはまだ、検討すべき内容もあり、何度か利用していく中で、作りかえていく必要があると思いますが、会議をどのように進めていくかを考えていくことが重要なこととしてとらえています。
     この第5章では、主に、会議の中で合意を形成していくことが、協働へつながる考え方の1つととらえ記載をしましたが、今後は、会議運営のほかにも「情報収集の仕方」「課題整理の仕方」「プレゼンテーションの仕方」、「事例研究の仕方」などがあり、会議運営を通じて、これら内容も深めていくことも感じています。

  • (福)横須賀市社会福祉協議会ボランティアセンター(通称:よこすかボランティアセンター)
    〒238-0041 横須賀市本町2-1市立総合福祉会館4F
    Tel:046-821-1303Fax:046-824-8110
    E-mail:shakyo-v@abox22.so-net.ne.jp

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