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災害時要援護者研究会(第4回) 会議記録


平成20年10月11日(土) 13:30〜15:30
市立総合福祉会館 2F 第2活動室 参加者:18名

1、栄区防災ボランティアネットワークの方からの自己紹介

DSC_4608.JPG(1)山本邦夫さん(代表)の自己紹介

 はじめまして山本です。横須賀市社協の平野さんとは、以前、お会いしたことがありまして、その時には、災害ボランティアの講演を伺いました。

 その講演はとても役に立ち、今回、自分たちが講演することになり、お役に立てるか不安もありますが、よろしくお願いします。

(2)宇都宮直哉さん(副代表)の自己紹介

 副代表をしている宇都宮です。この後、お話しする時間があるとのことですので、その時にあらためてお話をしたいと思います。

(3)鈴木徹郎さん(副代表)の自己紹介

 宇都宮と同じく副代表をしている鈴木です。よろしくお願いします。

2、栄区防災ボランティアネットワークの方から講演

(1)栄区防災ボランティアネットワークの概要(山本邦夫代表)

 栄区防災ボランティアネットワークの設立は、平成18年。きっかけは、平成16年に台風22号がきたことである。栄区は大変な被害を受けた。柏尾川という川が氾濫をした。10月8日・9日・10日の連休の時だった。私も自宅に被害を受けた。そのとき、区社協から電話があり「助けてくれ」という話があった。大船駅や長尾台の一帯が水につかった。

DSC_4611.JPG その時、私はパソコンのボランティアをしていた。区社協の電話では、誰にでも来てほしいということで連絡が来たので、活動を通じて知り合った人たちに声をかけた。

 その時は、床上浸水の家屋が多くあった。病気の人が1人でいる家屋もあった。集まったメンバーで、どうしたら困っている人たちを助けられるのか一生懸命考え取り組んだ。

 ひと段落ついた後に、栄区長(※ここでの区長は政令市でいう行政区の区長)へ相談に行った。3日間の連休で家には若い人々も沢山いたはずなのに集まったボランティアの多くは年配の人であった。私は昭和6年生まれで、私よりも年配の人たちが多かった。

 どうしてこういうことになるのか。いざという時に皆が助け合う仕組みができていないからであり、区としてもゴミを片付ける作業だけではなく、何か取り組めることもあるのではないかということが相談の趣旨であった。

 その後、特に区からのアクションはあまりなかったが、区の立場ではなく、住民の立場で取り組む必要性を感じたために、関係者に声をかけて平成18年に栄区防災ボランティアネットワークが立ち上がった。

(2)命を守る防災講座の説明(宇都宮直哉副代表)

 今、栄区防災ボランティアネットワークには3つの分科会がある。

 1つ目は、災害ボランティアセンターを立ち上げるため分科会。2つ目は、防災力向上分科会。3つ目は、要援護者分科会。

 要援護者分科会には、栄区にある5つのケアプラザの関係者がメンバーとなっている。また、聴覚障害者、視覚障害者、精神障害者の支援の方々がメンバーになっている。その人たちに、教わりながら取り組みを行っている。

 実際に障害のある人たちが地域にいて、そこで助けられるのは地域の人たちである。災害直後は、地域の人しか支援ができない。そのため、「地域との結びつきを大切にしてください」ということを、防災力分科会と力を合わせて要援護者に話をしている。

 要援護者の防災力をどうやって上げるかを意識して考えていくということを行っている。

DSC_4624.JPG 地震などの災害は他人事のように思われており、それを少しでも我が身のこととして意識をもってもらうために取り組んでいる。

 その方法の1つとして、パワーポイントで電気紙芝居を作成した。

 この紙芝居は、はじめから終わりまで一連の話をすると40分〜45分になる。今日は、この電気紙芝居で何を伝えたいのか、その概略を説明したいと思う。

 電気紙芝居で課題として感じていることは、聴覚障害者の「希(のぞみ)」というグループがあり、その中に聴覚障害者は10数名いる。手話をお互いに学びあおうというグループであり、そのグループに対して、どうしたら講演ができるだろうか。まだまだ考えていかなければならないというところでもある。

(〜以下、電気紙芝居の内容〜)

@震度7の揺れを具体的にイメージする

 関東地震から相当長い時間がたっているが、1923年から起きている地震は非常に少ない。そのため、エネルギーがたまっており、これから起こる可能性がある。これからが地震の活動期。想定されている地震は3つ。栄区で震度6強は70%、その他、東海地震、関東大震災などの確率を伝えている。確率は交通事故よりも非常に高い。

・阪神大震災の映像(「人と防災未来センター」のホームページより)。

・神戸市役所の職員が撮影した火災の映像。(「神戸市」のホームページより)

 この映像は震度7であった。この映像を見た上で、栄区で震度7になる地域を赤く示している地図を見せ、「自宅はどこなのか」を皆さんに問いかけながら、どのくらい揺れるのかということを知ってもらう。

A危険性を示した地図であるハザードマップから被害の状況をイメージする

 その地震以外にも自然災害による被害を予測しその被害範囲を地図化したハザードマップがある。横浜市では、各区でハザードマップを出している。また、横浜市には「わいわい防災マップ」がある。それを見ていただき、自分たちが水害や地震になったとき自分だけではなく自分の住むまちがどうなるのかということを知ってもらっている。

B行政の支援についてイメージする

 2つの事柄をあげて説明をしている。

 1つめは、横浜市栄区の住民は12万人いるが、区役所の職員は180人。ところが、職員のほとんどの人が地元に住んでいない。夜中に地震があったらどうするのか。誰が住民を助けるのか?

 2つめは、横浜市栄区では救急車の数は3台しかない。1台は予備だから、動くのは2台。地震の時に救急車がすべての被災者へ対応することは難しい。誰が住民を救助できるのか?

 過去の被災の事例では近所の人たちに助けられたのがほとんど。近所の底力を伝えている。地元を重視しなければならないことが言われている。

C高層住宅での地震の揺れをイメージする

 30階の建物の中での震度7相当の揺れを映像であらわしたものを見てもらう。映像の中にピアノがあるが、左右上下に移動しながら倒れ、凶器になることを伝えている。

 最近では、高層のマンションが建ち、高層マンションの揺れの特徴を理解し地震への対応をするように話をしている。

 高層住宅に限らないが、ピアノ以外にも家具の転倒防止をきちんとやらなければいけないこと、特に寝室には家具を置かないように伝えている。

 家具の転倒防止例も伝えている。家と家具、これが倒れたら命は守れません。

D地震で一番大切なことは、家屋の倒壊で被害を受けないこと。耐震補強の必要性を伝える

 阪神淡路大震災では、ほとんどの人たちが家屋の倒壊で即死だった。写真で倒壊住宅を見せ、1981年(昭和56年)の建築基準法以降の建物でもバランスが悪いと倒れることを伝えている。

 説明後、補強した家と補強していない家のシミュレーションの映像を見てもらい、建物の耐震補強が大事であることを伝えている。

 耐震補強では、耐震補強はお金がかかるということが言われているが、最近いろいろな例があげられている。(耐震シェルター、耐震ベッドなどいくつかの例を写真であげて安価な方法を紹介)

E要援護者への参加も含めた防災訓練の実施

 自分の住んでいる町を自分たちで守ろうという考え方が大切だと思う。単位は当然、町内会・自治会と考えている。その範囲の中で、まずは家族の生き残り力の向上、そして要援護者も含めて身近にいる人を守ることの大切さを理解してほしいと考えている。

 そのきっかけの1つとして防災訓練があり、防災訓練に行くと周りの人たちの雰囲気を知ることができる。それには、町にいる多くの人、特に障害者の方々も含めて参加できるような工夫が必要と感じている。

 参考までに、いま様々な市町村で取り組みが始まっているが、横浜市は要援護者避難支援システムを策定している。これを平成21年度全区内でやろうと動いている。これがどれだけ機能するかは、やはり、「自分の住んでいる町を自分たちで守ろう」という意識からだと思う。

Fまとめ

 まずは、わが家のチェック。先ほども話したが、家と家具これが倒れたら命は守れないので、家具の転倒防止、耐震補強の確認。家族会議も必要です。いざという時の安否確認の方法など家族で決め事を確認してください。非常用伝言ダイヤル「171」は、毎月1日に訓練ができるので、それを試すことも方法です。

 次に、地域の人とのつながりをつくること。今どんな人とつながっているのかということを確認し、いざという時の連絡先をつくっておくことです。

 そして、よりつながりを深めるために、防災訓練を実施や参加することです。特に、要援護者といわれる人への参加を促し日々の交流へとつなげていくことです。

 電気紙芝居の話では、地震発生の後にどうするかという話は一切出していない。地震が起こる前、災害が起こる前に何が必要かということを話している。それが大事だと思う。従来の防災啓発では、地震の後にどうするかということが多くあったが、起こる前のことを正しく伝える大切さがあると思っている。

(3)栄区亀井町の防災活動の説明(鈴木徹郎副代表)

 横浜市栄区の亀井町という地域では、防災活動に目覚めて活動しているところなので紹介したい。

(〜以下、亀井町の活動内容の紹介〜)

 高齢化率は31.6%である。今までは栄区内で2番目に高かったが、昨年17番目になった。このことは他の町内会でも高齢化が進んでいる様子が分かる。

 亀井町の自治会は70世帯で発足したが今は360世帯で組織している。亀井町の世帯数は475世帯あるので、100世帯が自治会に未加入であるが、無理して会員になることを薦めてはいない。

 私自身、防災に目覚めたのは13年前の阪神・淡路大震災である。あれは戦後最大の地震災害だった。しかし、時が経つにつれ、みんな人々の記憶から無くなっていった。そんなことから、亀井町で防災に関心のある人たち4人で勉強会を始めた。そしたら、平成16年(2004年)に中越地震が起きた。

 今日の参加者の中に山古志村に行かれたという人がいたが、中越地方は日本有数の地滑り地帯である。余震もひどかった。避難所としていた体育館が余震で大きく揺れたり、新幹線の復旧作業中にも余震により揺れがあった。

 テレビ報道で信濃川沿いの土砂が崩落して車が埋まり、その救助する様子を見て、人間の命の大切さを感じた。そこで、勉強会だけではなくて、活動していかなくてはならないという思いになった。そのことがきっかけで自治会長に防災活動について働きかけを行った。

 その後、一番はじめに、亀井町では防災設備などを設置した。主に防災倉庫や放送設備があるが、それ以外にも避難場所のすぐ隣に野菜畑があり、野菜を作っている方へ話をしに行き、災害時にはここにある野菜をいつでも使って良いという話しをいただいたりもした。

 次に啓発活動を行った。まずは被害想定であるが、横浜市の危機管理室では区の単位までしか被害想定しておらず、亀井町の具体的な被害想定は出していないという話であった。仕方がないので、自治会名簿をもとに、町を歩いて耐震具合などを調べ、横浜市の計算式から出してみた。亀井町の被害想定はスライドのとおり、平日冬の午後6時にマグニチュード7.9の際には、震度が6強から7になり、死者5人・負傷者56人・全壊建物66棟・半壊建物152棟になった。このことを伝えると、具体性があるので、地震が発生した際、どのようになるのかイメージしやすく、どうしたらいいのか、考えるようなきっかけになる。

 地域に住んでいる人で、行政がなんとかしてくれるだろうという思いをもっている人もいる。一番伝えたいことは、「行政がなんとかしてくれるだろう」という考え方を変えなければならないことである。地震が起きた際のイメージが具体的になればなるほど行政はすぐには、動き出せないことが明らかになってくる。

 たとえば、実際に、行政の職員も本人、家族が被災したら来られない。来るにしても、栄区の幹線道路はせいぜい2つしかない。そういうことを自分たちが認識しないといけないと思っている。

 それを理解して、行政や近隣の施設などとパートナーシップを組んで日常から防災活動をする必要がある。

 啓発活動は主に3つの取り組みを行っている。

 1つめは、体験をかねたツアーを行っている。防災という言葉だけでなく体験を取り入れていること。毎年、東京消防庁のところに行って震度7の体験してくる。体験をすると意識が変わる。震度7になると、ドアを開けることはもとより座ってもいられない。座っていても手をすりむいてしまう人もいた。トイレが安全というが便器に座っていられない。それを体験してもらうためにバスで東京消防庁へ行く。せっかく、東京まで行くので帰りは観光して帰る。楽しみも入れながら日々の防災意識を高めている。

 2つめは、防災訓練を実施していること。この写真は、平成19年の防災訓練の様子。障害者も含めて声を掛け合って住民が参集をする。到着したら人数を確認し参集人数を報告して訓練を行う。

 訓練の1つに車いすの体験があるが、これは自分たちでは出来ないので、地域のケアプラザと連携して指導員が指導をしてくれる。

 国が計画している要援護者の避難支援プランは個人情報に縛られすぎていると感じている。隣近所であればそれに縛られないでできる。助けてほしい人、助けられたい人がお互いに申告して、情報つなげておく。この人を助けてくださいということを決めておく。あとは普段の見守りである。高齢者も障害者もいる。それが社会ではないか。その人たちが助けあえる仕組みを作ることが大切と感じている。

 3つ目に、向こう三軒両隣の防災講座を開催する。内容は、電気紙芝居をやって、地震のメカニズム、耐震補強の重要性を知る。亀井町の被害想定を知ってもらう。この講座を受けて隣近所で何ができるかということを意識してもらう。ただ、隣近所で仲が悪いこともあるので、隣近所より少し広い地域で見守りをしていく。

 これらの取り組みを通じていろんなことを話し合える関係ができたこと。その1つとして、地震発生後、すぐ避難所に行けというが、すぐに避難所に行ったら火災をだれが消すことになるのか。誰が埋もれた人を助けるのか。自分たちの町を守るという意識が大事で、2、3日近所で助け合えばなんとかなる。それであれば、無被害の家を短期間の避難所にするのも1つだと思う。必ずしも、避難所に行く必要はないのではないかという話がでてきた。

 また、亀井町の防災活動の成果として、交流が広がったことや、要援護者支援のボランティアができたことがあげられる。それが普段の見守りにつながり、庭木の剪定にボランティアの人たちが手伝うようになるなど、地域で支えあう大切さが理解できた。

 私の活動の結論としては、住民のきずなが防災力を高めるということになるのではないかと思ったことである。

3、災害対応カードゲーム(クロスロード)の紹介

 プロジェクターでクロスロードゲームを紹介し、やり方などを伝えた。このゲームは、楽しみながら防災意識を高めることが出来るので、ぜひ実践をしてほしいと思う。

4、グループに分かれた意見交換会

(1)感想・学び

自分がやりたいと思っていることのもっと先のことをやっている。漠然としている防災のことを具体的な活動で行っていた。「自分のところがどうなるのか」という部分を丁寧に説明している。

住民の方々の底力と住民からの発信を大切にしていくことが地域の力をあげる。その良い例を栄区の人はみせてくれた。

町内会で全然意識が違う・・・それならば自分達でやろう。町内会が難しいのであれば別のところがやる!!

地域で生きていくことに向き合う姿勢が大切では。町内会に入っているが防災を考えているひとはいない。少しずつしか出来ないことではと思った。例えば、隣のおばさんになんと声をかけていいのかわからないし、町内会で毎年防災訓練はやっていても進展はしないのではと思ってしまう。

クロスロード、難聴者の会でぜひやってみたい。

何かやりたい!実際に地域で活動して、モデルを作りたい気持ちになった!

横のつながりの大切さを感じた。

今回は自助の話ではないか…? 災害ボラネット(ボランティアネットワークの略称)は共助のかたち。

今回の話をきいて、自分が6年前に防災活動をしたことがスタートであったと改めて気づいた。

防災に対する取り組みと説明する図案がわかりやすくよかった。

栄区亀井町の例はとてもよかった。

防災、特に減災に関してよく考えられていた。

自助、共助、公助に、なかでも自助力の部分での勉強、基礎知識の充実をはかっていることを学んだ。

自助力に重点をおいて防災活動を始めたのには、どのような出発点があったのか知りたい。

大変参考になった。とともに横須賀で行っていることの復習の感もあり改めて確認することが出来た。

近所に集ってもらい防災の話合いをするのはすばらしい。私の所属するボランティア団体で災害の話や器具を持って話をしていただきたい。

クロスロード是非もっと勉強したい。

自分の近所で防災の話合い等できればと思った。

(2)これからの課題や横須賀で取り組めそうなこと

重度の知的障害をもっている子のことを思うと、災害がきたことすらわからないかもしれない。それをどう伝えていけばいいのか考えさせられた。

横須賀は地域での温度差がある。古い町と新しい町が混在していることが特徴であり、横須賀の課題ではと思った。若い世代の町内会への関わりをどう作っていくのか考えたい。

自治会が仕掛けて、小グループをつくり活動していくことが大切では?例えば、犬仲間を利用してグループをつくったりもできると思った

今まで、外国籍の人に何も伝えてこなかった。

まだまだ今日学んだことがひとつの形になっていない…自分に何ができるのかぼんやりしている。

こうしていろんな団体の方が集まって前向きに考えている。このことを何かの形にしたい。グループ討議では防災まつりをしてはというアイデアが出た。

障がいを持つ人の気持ちがわかっていないので、災害に対す安全意識をどうもたせるか悩んだ。

自助の力が大切である。その方が減災に役立つ。自助力をどう充実させていき減災に役立てていくのが課題であると思った。

横須賀でも、防災に関して話し合うという出発点は大切にしたい。

5、次回にむけて

 次回は、国際交流協会からの事例報告として「横須賀に住む在日外国人が災害時に感じていること」を中心にお話をいただくこととなった。

次回は、平成20年11月4日(火)18:30〜県立大学で開催予定

(福)横須賀市社会福祉協議会ボランティアセンター(通称:よこすかボランティアセンター)
〒238-0041 横須賀市本町2-1 市立総合福祉会館4F
Tel:046-821-1303 Fax:046-824-8110
E-mail:shakyo-v@abox22.so-net.ne.jp

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